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「うつ」の人にどう接すればいいのか
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うつ病治療に認知療法
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「うつ」と自立神経失調症
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「うつ」がよくならないとき
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「うつ」の人への接し方
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間違い電話の夢
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「うつ」から仕事復帰へ
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更年期の女性の「うつ」
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「うつ」が改善してきたら
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うつや、躁鬱病(双極性障害)の人ほど薬物依存が高まる
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「うつ」の人の思考パターン
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「うつ」の人にどう接すればいいのか
うつ病は「心のかぜ」などといわれるように、基本的に短期間に回復する疾病であると考えられています。
たしかに多くのうつ病は数か月(おおむね3か月以内)に回復する経過をとります。
しかし2割から3割、つまり4人か5人にひとりは3か月以内に回復せず、その結果、日常生活、社会生活に多大な損失をこうむることになります。
さらに、うつ病の長期経過についての最新の研究でも、2年以上「うつ」が続く人が13%〜21%もあるとされているのです。
これは一般に考えられているより深刻な事態です。
「うつ」を簡単に「心のかぜ」と安易に考えることは危険です。
うつ」の人にとって再発は、初回よりもさらに辛さが増すことが多く、やっと治って以前の生活に近づいてきたなと思った矢先に、また絶望のどん底に叩き落とされてしまうのです。
「うつ」はかぜと違って、なかなか周囲の理解が得られません。
かぜならどんなにひどくても4、5日休めば、以前となんら変わりなく回復し、もとの生活に戻っていくことができます。
しかし「うつ」の場合、外見上、なんら問題はなく、外出などもできるために、怠けていると思われてしまうのです。
これは「うつ」の人にとって病気自体の辛さに加えて周囲の無理解という二重苦を背負わされているのと同じです。
そして半年以上も仕事もせずに過ごしていると、「うつ」の人はしだいに世間から孤立し、よけいに病状の長期化を招いてしまうという悪循環に陥ってしまうのです。
カテゴリー:うつ病
うつ病治療に認知療法
仮に私自身が「うつ」になったとしたら、自分に合った薬を見つけて服用することが重要なのですが、それと同じぐらいに認知療法を身につけることも大切なことだと考えています。
認知療法とは簡単にいえば、「うつ」の人のマイナス思考、悲観的考え方を修正するスキルのことです。
私は思うのですが、物事はその見方によって、気分がマイナスにもプラスにもなります。
「うつ」の人はすべての事柄を悲観的に、それも極端にマイナスに考えてしまうのです。しかし、実際は「うつ」の思考の歪みによって、極端に負の方向に歪曲されています。
そのことに「うつ」の人はまったく気がつきません。
さらにこの歪曲が完全に固定化されてしまうと、「視野狭窄」に陥ってしまい、「自殺」の危険性が高まります。
したがって認知療法をマスターすることは自殺を予防することにもなるのです。
実際の臨床場面では、「うつ」が極限の時期にあり、考える力がなくなっているときに認知療法を理解して実践することは非常に困難です。
むしろ認知療法は 「うつ」の再発を防ぎ、日常の生活を楽しむために用いるのがよいと私は考えています。
「うつ」の人はついつい悲観的な考えになってしまうので、それをより現実的な考えに修正するのです。
そうできれば自殺は遠いものになるだけでなく、日々の暮らしも明るいものになっていくのです。
カテゴリー:うつ病
「うつ」と自立神経失調症
もしあなたの周囲の人が「自律神経失調症」という診断を精神科、心療内科以外で受けたら、それは要注意です。
その理由はふたつあります。
ひとつは、「自律神経失調症」という病名は実は存在しないからです。「自律神経失調症」は、日本でしか通用しません。
内科などで「自律神経失調症」と診断される場合のほとんどが「原因不明の身体症状」を訴えていると見なされているのと同じです。
日本では「自律神経失調症」が確立した病名のように扱われて、「自律神経失調症」に関する啓発書がたくさん出版されていますが、正確にいえばそれは本来、間違っているのです。
「自律神経失調症」は、厳密にいえば「なんらかの疾患に伴う自律神経症状」と言い換えることが可能です。
もうひとつの注意点は、そこにしばしば「うつ」が隠されている可能性があるという点です。
原因不明の身体症状を訴え、内科的な検査によって器質病変が見出されないときには、一般の内科医は「自律神経失調症」という診断を下しがちです。
しかし、「自律神経失調症」という病名を付けられて安心してはいけません。
そのときに、自律神経とはいったいどういうもので、どういう働きをしているのかを説明してくれる名医はまずいないと思います。
「自律神経失調症」は病名ではなく、ただわけのわからない訴えに対して、除外診断として、あるいはゴミ箱的な病名として付けられているという印象を受けます。
その一方、この「原因不明の身体症状」を訴える患者さんが非常に多いのはよく知られていて、総合病院にはとくにたくさんの患者さんがいると考えられます。
総合病院の精神科を受診する患者さんの6人にひとりは「原因不明の身体症状」を訴えているという報告もあるそうです。
しかも、原因不明の身体症状を訴える患者さんの半数以上が「うつ」的な側面を持っていました。
「原因不明の身体症状」を訴える患者さんは、精神医学では「身体表現性障害」と呼ばれています。
そして「身体表現性障害」と「うつ」の合併が非常に多く認められるのです。
「身体表現性障害」は、その患者さんの多きにもかかわらずほとんど知られておらず、しかもその昔しみは強烈で、症状による苦しみと周囲に理解してもらえない苦しみをあわせ持っています。
詳細はここでは述べませんが、個人的には、今後、広く一般に知られるようになることを願っております。
先ほど述べたように、「身体表現性障害」と「うつ」はしばしば共存します。つまり「原因不明の身体症状」を訴え、「自律神経失調症」という診断を受けた人の多くが実は「うつ」であり、やすやすと「うつ」が見逃されてしまうのです。
そして「身体症状を前景とするうつ病」、あるいは「身体症状で精神症状がおおわれたうつ病」は、「仮面うつ病」と呼ばれることがあります。
言葉どおりに身体症状という仮面をかぶった「うつ病」ということです。うつ病には自律神経症状が必ず伴います。
詳しく話を患者さんに聞けばほとんどなんらかの抑うつ、不安などの精神症状を認めます。したがって、「仮面うつ病」はほとんど存在しないでしょう。
なぜなら「仮面うつ病」といっても実態は「うつ病」であり、それは聞き取り方が甘いか、患者さんが頑として精神症状を認めないかのいずれかだと思うのです。
よく「内科で自律神経失調症といわれた」とか「うつ病と自律神経失調症とはなにが違うのか」という疑問を、医師は患者に尋ねられるそうです。これに対する回答は「うつには自律神経症状はつきものであり、自律神経失調症は病名ではない」と答えることにしています。
「うつ」に伴う自律神経症状としては、全身倦怠感、疲労感、不眠(とくに中間覚醒、睡眠障害、早朝覚醒)、食欲不振(味がわからないというものが多い)、体重減少、吐き気、腹部不快感、胃の膨満感、頭痛、頭重感、口の渇き、のどの違和感、めまい、ふらつき、肩こり、背中・腰・関節の痛み、手足のしびれ、冷感、動悸、胸部圧迫感、呼吸困難感、便秘、下痢、頻尿、排尿困難、性欲減退などがあります。
たしかにこれだけ見れば、私たちの誰もが疲れているときにはこうなると考えるでしょう。
しかし「うつ」の人の自律神経症状は、私たちよりも症状を深刻に考えすぎたり、苦しさ・辛さの度合いが、その人の生活全般に障害を及ぼしていたり、非現実的なほどに症状にこだわったりするのです。すなわち「自律神経失調症」といわれたときは、要注意なのです。
カテゴリー:うつ病
「うつ」がよくならないとき
次に「うつ」がなかなかよくならないときです。
これは治療が不十分な場合がもっとも多いのですが、医師と「うつ」の人との信頼関係も影響を及します。
抗うつ薬、抗不安薬(精神安定剤)、睦眠導入剤といった、ふだんはお目にかかることはない、ましてや飲むことなどけっしてなかったであろう名前の薬を飲むのですから、そこにはお互いの信頼なくしての服用はあり得ないのです。
つまり信頼の度合いが低ければ、少しの副作用でも服薬を中止してしまうだろうし、副作用が出たときに医師から「そんなはずはない」などと告げられたら、もう通院するのもやめてしまうかもしれません。
また一般的に、抗うつ薬は効いてくるのにある程度の時間がかかるし、逆に副作用は服用初期に出現するので、なおさら信頼関係が大切なのです。
ただし「うつ」の人は信頼関係を築きやすい人が多いので、あまり心配する必要はありません。
なかなか思うように症状の改善がみられなくても、あきらめる必要はまったくありません。
「うつ」の人は病状が長引いてくると、外へ出るのをためらうようになってしまいます。自分に自信がなくなってしまうのです。そしてこのために「うつ」がよくならないと訴え続けることがしばしば認められます。
さらに「うつ」は、一般の啓発書に必ず「休むことが大切」と金科玉条のように載っています。
だからそれを楯にとって、どんなときもそれを守ってしまうことがあるのです。
休むことは、これまで述べてきたように重要なのですが、「うつ」が長期化して、「いつまでたってもなにもやる気がしない」と訴えるときには、この 「休まなくては治らない」ということは当てはまりません。
ただし、「休むこと」というのは「無理をしない」「あせらない」ことであって、適度な外出と運動は休むことと同じなのです。
つまり、ただ寝ていればよいということではありません。
たしかに自殺の危険が迫っていたり、うつ状態が極限に悪い時期は寝ていることは必要なのですが、寝てばかりいると 「うつ」の状態が慢性化してしまう危険をはらんでいるのです。
だいたい半年以上治療が継続しているにもかかわらず、「なにもやる気がしない」「家事をやる気がしない」「外へ出たくない」「ただ1日寝ていたい」などという訴えは慢性化の因子を含んでいると考えられます。
このときにはいくら寝ていても事態は少しも好転しません。
このような慢性化の状態に「うつ」の人が陥って、そこに自殺の危険性がないのならば、「とにかくなにかやってみる」ことをすすめます。
具体的には「うつ」になる前に好きだったこと、手芸、散歩、読書、ショッピングなど、その人が以前だったら楽しめたことならなんでもかまいません。
とにかくベッドから出ることが必要なのです。
そしてとにかくやってみると、「できない」とかたくなに信じ込んでいる「うつ」の人が、意外にもけっこうできたりするのです。
実際、慢性化を来しているときには、「できない」という思い込みが強いため、できることもできないと錯覚していることがほとんどです。
とにかく「うつ」が慢性化したときは、「まずなにか好きなことをやる」「ベッドから出る」ことを頭に入れておかなくてはいけません。
このことは認知療法ではよく知られたことですが、一般の精神科医は知らない人がたくさんいると思われます。
カテゴリー:うつ病
「うつ」の人への接し方
部下への接し方
「うつ」の人にどのように接していいかはなかなかむずかしい問題です。
もっともむずかしいのは、それが「うつ」という心の病気のせいなのか、ただの落ち込みなのかという点です。
これは表面的にはわかりません。
話をしてもおそらくわからないでしょう。
なぜならその人が仮にうつ病であったとしても、会社の上司や同僚に知られたくなければ、「うつ」 であることを打ち明けることはないからです。
さらにプライバシーの点からも、他人の心の中にズカズカと踏み込んではいけないことはいうまでもありません。
したがってなにかマニュアル的なことを示すことはできません。
ただ、部下に対して売り上げが伸びていないときや、業務の進捗が滞っているときに部下を励ましたり、叱咤したときに部下がいつもと違った反応、つまりいつもは上司の期待に応えようと懸命に努力して、期日を凡帳面に守る部下が、それができずにとても暗い顔をして、どうしてもできないと涙ながらに訴えれば、その部下は「うつ」かもしれません。
病前性格と「うつ」との因果関係は認められてはいないものの、やはり「うつ」になる人の多くは、真面目、凡帳面で他人に気をつかう人が多いのです。
そのような性格の人は上司に無理難題を吹っかけられても、なんとかしようと懸命に努力しすぎるのです。
もともとそのような生き方をしていた部下が、それまでとは違った「できない」という選択を上司に示したときは「うつ」の黄色信号かもしれないのです。
気晴らしのため、遊びに励ましてもいいのか
これも単なる落ち込みなのか、「うつ」という心の病気になっているのかで、事情は変わります。
先ほどと同じく単なる落ち込みであれば、もちろん気分転換になるのでお酒を飲むことも効果的かもしれません。
飲みながら上司に不満をぶつけることでふだんの仕事上のストレスも解消されるかもしれません。
けれども部下や同僚が「うつ」で休みがちになっていたとすれば、飲みに誘ったり励ましたりすることはその人を追い詰めることにもなりかねません。
「うつ」になっているその人は、おそらくもともと、飲み会などでも上司や同僚に過剰に気をつかって、いいたいことの半分もいえないような人であることが多いと思います。
そのような人に対して、病気を早く治してあげようと飲みに誘ったり、励ましたりすることはプレッシャー以外のなにものでもありません。
さらにその人は周囲に気をつかうあまりに飲み会を断れず、飲み会でもいっそう気をつかい、仕事以上に疲れ果ててしまうかもしれないのです。
大切なことは部下や同僚に「うつ」かどうかを見抜く眼力が必要でしょう。
また、それが上司としての管理能力ともいえるのではないでしょうか。
受診をすすめるタイミング
これも上司の管理能力が関わると思います。
部下がふだんの能力とはあまりにもかけ離れた仕事のミスを続けておかしたり、仕事にまったく集中できていないといった状態が1か月以上にもわたるならば、そのときは「うつ」を疑うべきでしょう。
その場合、最初はその人の話にじっくりと耳を傾けるべきです。
そして落ち込んでいる要因79があり、それが日常生活や仕事上に大きな影響を及ぼしているなら、そのときは迷わず受診をすすめるべきだと思います。
これはもちろん同僚でも同じことです。
また仕事をしている人の「うつ」では、しばしば意欲低下、悲哀感よりも集中力低下、記憶力低下、決断力・判断力の低下などが突出して認められることが多いのが特徴です。
休職が長引いている人の家を訪ねたり、電話してもいいか?
会社側の立場として、「うつ」で休んでいる人がいれば、状況を知りたいと考えるのは至極当然なことかもしれません。
しかし、職場が、「うつ」の原因ではないにせよ、発症のきっかけとなっている場合は、その人にとって会社側と連絡をとることが非常に苦痛であることも少なからずあるものです。
ですから最低限の事務的な連絡事項は仕方がないとしても、休職中の人を激励しょうとしたり、訪問して様子を見にいくという行為は控えたほうがいいでしょう。
休職を余儀なくされている人にとって、直接病状を聞かれるのは辛いものです。
家を訪問されたり電話されたりといったことは、本人にとっては「心配してくれている」というより、「会社は自分のことをわかってくれていない」と解釈しがちです。
連絡するときは、できれば手紙か電子メールがいいと思います。
具合を尋ねるときは、仕事上の事務的な連絡事項に添えるような形で、さりげなくするのがよいでしょう。
そのときに、「いつでも待っている」.
というようなメッセージを添えれば本人の気持ちが楽になるのではないでしょうか。
また、会社の人が主治医と面接を希望して病状を尋ねたいといったとしても、個人情報保護の観点から主治医が病状について説明することはできないし、なにより主治医は患者さんの不利益になることはいわないのが一般的です。
主治医に病状を聞くときは本人の同意が必要です。
会社に産業医がいれば、彼らを通じて主治医にコンタクトするのが望ましいでしょう。
もし産業医がいなければ、本人が信頼している上司に主治医と面談してもらうようにしてください。
職場復帰した人の迎え方
病気が改善し、いざ復職という段階でのプレッシャーは相当のものがあります。
したがって前にも述べたように、復帰当初の数か月は時短勤務で、休日勤務、残業は控えることが望ましいと私は考えます。
あせりは禁物なのです。
一方、そのような状態で不安をかかえながら復職した人に対して、あまりに腫れ物にさわるようにして接すると本人がかえって気をつかったり、息苦しくなったり、なにも仕事をしない自分を責めて、自分は価値がない人間だと逆に考えることもあります。
できれば、以前その人がしていた仕事を、無理のない適度な仕事量で与えてほしいと思います。
声かけも根掘り葉掘り聞くのではなくて、たまに「どうかな」とか聞くだけで十分です。
それと復職祝いだとかで飲み会などをするのは控えてください。
大切なことは緩やかなランディングを本人も周囲も心がけることなのです。
復職間もない時期にそれまでの遅れを取り戻そうと躍起になったり、これまでみんなに迷惑をかけたから以前にも増してがんばったりするときは要注意です。
遅かれ早かれ必ずその人はつふ潰れます。十中八九、再び休職を余儀なくされます。
そのようなときは周囲の人は仕事をセーブするよう進言してあげてください。
先ほど述べたように緩やかなランディングこそが大切なのです。それが再発を防ぐのです。
またハイテンションが続いているときは躁状態の可能性があります。調子がよいからと本人が話しているときは危険です。
躁状態は「うつ」と表裏一体のところがあります。
躁状態になる因子には、操と「うつ」を周期的に繰り返すタイプでやむを得ないときもあるのですが、復職直後にがんばろうとしすぎて躁状態になったりすることもあります。
いずれにしても操状態は100%、遠からず「うつ」になります。すると躁状態がハイであるほどロウ、つまり「うつ」も深くなってしまうのです。
操のあとの「うつ」はそれは苦しいものです。
だからこそ躁状態は要注意であり、周囲の人は復職間もない時期にハイテンションな人がいたら、そのときは仕事をセーブすることを強くすすめてください。
カテゴリー:うつ病
間違い電話の夢
うつ病の研究で知られるアーロン・ペックは、人は気持ちが落ち込むと悲観的に考え、悲観的に考えるとますます気分が落ち込むという、「認知」と「感情」の悪循環を学問的にあきらかにした人です。
彼の研究によると、うつ病の患者さんは次の考えに支配されています。
(1)自分に対する否定的な考え…「集中できないし、もの覚えが悪くなった。だから自分はダメな人間だ」
(2)周囲に対する否定的な考え…「自分は何ひとつおもしろい話もできなくて、こんな人間とつきあいたいと思う人なんていないだろう」
(3)将来に対する否定的な考え…「このつらい気持ちは一生続いて、絶対に楽になんてならない」
ペックはこれらを、ちょっとむずかしい言葉ですが「自己、世界、将来の三領域における否定認知の三徴」とよびました。
また、ペックはうつ病の人の夢を研究していて、うつ病の人は極端なマイナス思考のために、気持ちも行動も萎縮していることを発見しました。
よく知られている「間違い電話の夢」を紹介しましょう。
ある人がある田舎町にいるときに、急に電話をかけなくてはならないことになりました。
一生懸命探し回ってようやく公衆電話を見つけることができたのですが、ポケットにはコインが1枚しかありません。
しかも、そのたった1枚のコインでかけた電話が間違い電話で、別な人のところにかかってしまいました。
「ああ、もうダメだ」と感じたところで、その人は夢から覚めました。
そして、目覚めたあとも「いつも私は失敗ばかりしている。なんてダメな人間なんだ」と考えてもんもん悶々とするのです。
この夢でみられるマイナス思考の特徴として、まず「自分から可能性を否定している」ことがあげられます。
少し冷静になって考えれば、「電話に出た人に謝って、自分のかわりに連絡をとってもらうように頼もう」とか「近くの家を訪ねて電話を借りよう」とか、解決方法をいくつか考えることができます。
ところが、「うつ」のときは気弱になっていますから、「頼んでもどうせ断られる。いや、怒られるかもしれない」と悪いほうへ、悪いほうへと考えて身動きできなくなり、
どんどん自分を追い込んでいってしまうのです。
もうひとつの問題点は、これが夢であるにもかかわらず、「いつも」自分は失敗していると一般化して決めつけ、自分が「ダメな人間だ」と自分を否定しているところにあります。
このような考え方をしていると、今現実に直面している問題に目を向けることができなくなってしまいます。
カテゴリー:うつ病
「うつ」から仕事復帰へ
仕事に復帰するときは注意が必要です。
十分に余裕がが生まれた状態で復帰すべきです。ほとんどの「うつ」の人は復帰をあせります。
十分に余裕が生まれた状態で自分が社会から置いてきぼりをくつたような気持ちになるからです。
しかし、治りかけの状態で復帰することは厳禁です。必ず早々に再発します。
治癒率80%での復帰は認められません。なぜなら結局、失敗して、休職期間が延びるだけだからです。
100%で復帰しても再発することはよくあります。だから120%ぐらいの状態で余裕を持って復帰してちょうどいいぐらいです。もう大丈夫だろうではなくて、早く仕事をしたいぐらいの余裕が出てから復帰しても、けっして遅くはないし、そのほうが結果的にプラスに作用するのです。
2回目、3回目の休職は、「うつ」を患うような真面目な人にとってさらに辛く苦しい体験となります。
「うつ」の回復は「急がば回れ」の典型なのです。
さらに職場復帰に際して、会社が認めてくれるならば、助走のような期間を3か月から半年間つくるのも、再発を予防するために効果的です。
すなわち残業、休日出勤、遠方への出張、夜間勤務などを控えてもらうことです。
これは職場によって事情があり、できないところもありますが、できれば過重な労働は復職当初は避けるべきです。
最近はメンタルヘルスへの関心の高まりもあって、復帰後しばらくは1日4時間程度の軽減勤務を認めてくれる職場もあります。
これは喜ばしいことです。
「うつ」の人は真面目な会社人間であることが多く、すぐにフルスロットルで働こうとして失敗するので、このような復職制度が拡大することは 「うつ」 の人にとって朗報だと思います。
いつ「うつ」の苦しさがなくなるのかは、その人の重症度や環境にもよるので、いちがいにはいえないし、個人差が非常に大きいものです。
個人差が大きいので、はっきりと、いつごろ症状がなくなるとか、治るとかはいえません。けれどもたいていは1か月以内にはかなり気分は楽になり、いやな気持ちは軽くなるし、少しずつ意欲は出てきます。
昔から、「うつ」になる性格(痛前性格)というものがまことしやかにいわれてきました。たとえば人に気をつかう、過ぎたことをくよくよ考える、小心、神経質、凡帳面などです。
たしかに私が出会った「うつ」の人も、ほとんどすべての人がこれらの性格に該当しています。
したがって私たちは自分が「うつ」になりやすい性格と考えたりする必要はないし、性格のせいで治りが悪くなるといったことはまったくありません。
むしろ「うつ」の人はとても律儀です。
定期的に通院して、薬を服用してくれるので、病気の治りもスムーズにいくことのほうがはるかに多いのです。
ただ生真面目すぎて副作用が出ても私に気をつかって話さないこともあります。
気になることがあればすぐに名医に報告すべきです。報告こそが医師にとって有益な情報となるのですから。
もし、副作用などの報告をしたとき「そんなことはない」などという医師は論外です。そんな医師にかかるのはやめて、別の名医を受診したほうがよいでしょう。
カテゴリー:うつ病
更年期の女性の「うつ」
更年期の女性の「うつ」は、もちろん更年期前後に発症することが多いのですが、更年期をかなり過ぎてからでも、つまり50歳代後半から60歳代後半までの女性にも更年期と同じような症状が出現することがしばしば認められます。
一般的な更年期症状は閉経前後から身体的不調、たとえば全身倦怠感、手足の発汗、顔面の紅潮、動悸などの身体症状が主要な症状であり、精神症状はそれほど重篤なものはなく、軽度の憂鬱気分、意欲の低下、気力の減退などを認めます。
しかし、ほとんどの更年期症状は閉経とともに消えていくのがふつうの経過です。
それに対して更年期の「うつ」の場合は、一般的な更年期と比べて発症が比較的急激であることが多く、発汗、火照り、動悸などの身体症状を初期症状として認めることが多いのは同じですが、身体症状の出現からそれほど間を置かず、通常3か月以内に強い倦怠感とともにとりわけ意欲がわかないという精神症状が出現することが多いという印象があります。
そして意欲の低下とともに憂鬱、悲哀感、悲観的になり、しばしば自殺念慮にまで発展することが多いのです。
これは更年期の「うつ」や、更年期以降に発症する女性の「うつ」にも共通に認められます。
更年期症状は自覚的にもかなり辛い体験ですが、更年期「うつ」そして更年期以降の女性の「うつ」でも、彼女らの感じる辛さはまさに「死んだほうが楽」というほど激烈なものであることが多いのです。
しかし、これらの、急激に発症し、重篤なうつ症状をロ王する更年期の「うつ」および更年期以降の女性の「うつ」は非常に辛さを伴う心の病気ではあるのですが、治療によって比較的速やかに改善することが多いのも特徴なのです。
急激に発症した病気の多くは、急激な回復を示すことが多いのですが、更年期の「うつ」も更年期以降の女性の「うつ」も治療によって急速に回復することもあり、治療する価値の高い心の病気であるといえます。
ただし、もちろん例外もあり、回復が進まないケースももちろんあるのですが。
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「うつ」が改善してきたら
「うつ」が改善し、通常の日常生活に戻っていくときは注意が必要です。
これまで述べてきたように「うつ」は再発の多い病気です。しかも状態が改善してから早期に再発しやすいのです。
とくに職場への復帰は慎重を期さねばなりません。
多くの「うつ」の人は職場でのストレスをきっかけに発病しています。
したがって同じ職場、同じ人間関係のところへ復帰するのは当然、高いリスクを伴います。
職場復帰の際に、「うつ」の人は元来、生真面目な人が多いのか、あるいは自分のポジションがなくなることを過度に恐れてか、復帰を急ぐ傾向にあるような気がします。
「うつ」の状態が改善し、復帰を考慮しているときに、よく「うつ」の人は「だいぶ状態はよくなったと思います。
そろそろ職場に戻りたいと思うのですが、仕事のことを考えると不安になったり、動悸がしたりするんですよ」と話します。
このようなときに復職するのは得策ではありません。
たしかに無理をすれば職場復帰は可能です。しかし、長続きはしません。
また職場に起因した「うつ」だけでなく、家庭環境、周囲の環境に由来する「うつ」でも当然、回復したあとの環境調整は重要です。
「うつ」の人の回復期にはあまり本人にストレスのかからない環境を整えることは再発を防ぐためには大切なことです。
さらに「うつ」が改善すると、家族は、とくに主婦の場合は以前と変わらない仕事量を期待されがちです。
しかし、病み上がりであることや、無理させてはいけないことを家族も理解してあげることが必要です。
「うつ」は骨折や胃潰瘍などと違って、これで完全に治ったという線引きがむずかしいし、目に見えないので、長引くと家族は、どうしても「怠けているんじゃないのか」と考えがちです。
よく「うつ」の人から間接的に、そして家族から直接こうした話を聞きます。
さらに「いつまで薬を飲んでいるんだ」「いつまで病院に通っているんだ」「甘えているだけじゃないのか」ともいわれます。
けれどもこれは的外れな考えです。
少し考えてもみてください。誰が好き好んで精神科、心療内科などへ通いますか。
それに精神の薬を飲み続けるようなことができますか。それほどの事態がまだ続いているのです。それほどの苦しみなのです。それを理解してあげてください。
主治医には、家族が「うつ」を誤解していたら、それをきちんと説明してほしいと願います。
カテゴリー:うつ病
うつや、躁鬱病(双極性障害)の人ほど薬物依存が高まる
少年期に「そう」と「うつ」が表れる躁鬱病(双極性障害)にかかると、アルコールや薬物の乱用に走る確率が高い、と米マサチューセッツ総合病院のティモシー・ウィレンス博士(小児精神薬理学)らが発表しました。
双極性障害とはうつ病の一種で、気分が高揚する「そう状態」と、気分が落ち込む「うつ状態」の両方が繰り返し表れる症状のことです。
同博士らは、子供の時に双極性障害と診断された105人と、うつ病にかかっていなかった98人を対象に、成人後のアルコールや薬物依存状況を調べた結果、
双極性障害と診断された人は34%がアルコールか薬物乱用に陥っていた。うつ病にかかっていなかった健全な人にこうした習慣があったのは4%だけだったそうです。
おそらく、双極性障害によって判断力が低下し、薬物依存などに走る人が多いのでしょう。
サンプルは105人と少ないかもしれませんが、しかし1/3以上が薬物に走る調査結果が出ているとは驚きではないでしょうか
双極性障害や、うつ病は比較的小さい、子供の頃からその兆候があります。
ただ、その兆候が、本人の親にも分からないほど見逃されやすいのです。
「うちの子供は少しおかしいんじゃないのか」
そう思ったら、積極的に精神療法や専門家によるカウンセリングを受けるべきでしょう。
カテゴリー:うつ病
「うつ」の人の思考パターン
人は物事をどう見るかで気分や感情は違ってきます。
たとえば、誰もが教師や上司に叱責された経験があると思いますが、
そういうときに、自分のことを考えて叱責してくれたと前向きにとらえるか、自分はなんて価値のない人間だととらえるかで気分は大きく異なってきます。
たしかに、私たちは誰もが、そのときの自分自身の心の状態で前者のように考えたり、後者のように考えたり、叱責された人との関係性で、とらえ方も自ずと異なってきます。
けれども「うつ」の人の思考は、あまりにも現実と乖離しているのです。
「うつ」になると、それまでとは異なるものの見方をしてしまい、身のまわりのあらゆることを否定的にとらえ、気持ちが落ち込んでしまうのです。
自分は、もともとこういうようなもののとらえ方をしているという人もいるかと思います。
それでも、その人は生活すべてにわたりそうとらえているわけではなく、いつも必ずそうしているわけではないと思います。
なぜなら、もしそうならふつうの日常生活・社会生活を送ることができないからです。
『いやな気分よ、さようなら』(星和書店)で挙げているを紹介させていただきます。
・全か無か思考‥いわゆる「オール・オア・ナッシング」の思考で、自か黒かのどちらかに決めてしまう。完璧でないと気がすまない。少しのミスは命取りだと考える。
・一般化のしすぎ‥たったひとつのよくないことが、世の中すべてこういうふうだと考える。そのために先の見通しのすべてが悪く思えてしまう。
・心のフィルター‥たったひとつのよくないことにこだわって、そればかりくよくよ考え、現実を見る目が暗くなってしまう。ちょうどたった1滴のインクがコップ全体の水を黒くしてしまうように。
これを私が患者さんに説明すると患者さんは必ず強くうなずく。
・マイナス思考‥よいこともすべて悪いほうに考えてしまう。よいことはたまたまで、次は必ず悪くなると考えてしまう。これでは、毎日の生活がすべて暗くなってしまう。
・結論の飛躍‥根拠もないのに、悲観的な結論を出してしまう。
A.心の読みすぎ‥なにかをいわれたときに、それを否定的なことだと早合点してしまう。
それが確かな忠告であっても、自分は価値がない人間だといわれたような気がしてしまう。
B.先読みの誤り‥事態は確実に悪くなると決めつける。これは現実を無視した形で現れる。
よくみられるのは、自分の病気は絶対に治らないとか、お金がなくなって生活できな くなるとか、現実的にはそんなことはあり得ないのに、周囲にどれほど大丈夫だといわれても、悪くなると決めつける。
・拡大解釈(破滅化)と過小評価‥自分の些細な失敗は過大に考えてしまい、自分の長所は過小評価する。
少しのミスでも、自分はほんとうに能力のない人間だと考え、周囲の人から気配りのある人だといわれても、そんなことは誰でもそうなのだから、などと考えてしまう。
・感情的な決めつけ‥周囲の人に、そんなことはないとか大丈夫だとどんなにいわれても、自分がそう感じているから、それは確かなことだと決めつけてしまう。
・すべき思考‥なにかしようとするときに「〜すべき」「〜すべきでない」と考えてしまう。
そして、そうしなければ罰を受けるのではないか、悪いことが起きるのではないかと思う。
・レッテル貼り‥少しでもミスをすると、どうしてミスをしたのか考えるよりも「自分はダメな人間だ」「自分は能力がない」とレッテルを貼ってしまう。
・個人化‥悪いことが起こったときに、自分にまったく非がないような場合でも、自分のせ いで悪くなったと感じてしまう。
以上の10の認知の歪みは「うつ」の人が必ず陥る思考パターンです。
そしてこれらの歪みが存在するがために「うつ」の状態が容易に改善しないのです。
さらにこれらの認知の歪みが残存すれば、社会復帰への足かせになります。
しかし「うつ」が治るときには、これらの認知の歪みも自然により現実的な思考へと変わっていくのです。
あなたの周囲の人がこのような思考パターンに陥っていたら、そのことは「うつ」によってもたらされている可能性があることを指摘してください。
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