女性の一番のストレス解消法が、うつ病治療に役立つ
子どもの巣立ちを見送ったあとの主婦の多くは、程度の差はあれ、「心にポッカリとあいた穴」を「どのように埋めていくか」、あるいは「どのように生きがいづくりをするか」という問題に直面します。
人によって、心にあいた穴を埋めるものはそれぞれ異なりますが、人とのコミュニケーションは重要な要素のひとつです。
実際、女性に「あなたのストレス解消法は?」と尋ねたアンケート調査では、「友人とのおしゃべり」が上位にランクされることが多いようです。
ちなみに、昭和63年厚生省(現・厚生労働省)福祉動向調査では「おしゃべり・話を開いてもらう」と答えた人が全体の61.1%、
平成5年、第一製薬が実施した「現代女性の生活意識とストレス」では「気のあった人とのおしゃべり」と答えた人が全体の62.1%。
いずれも第2位を大きく離して1位に輝きました。
精神医学の観点からも人とのコミュニケーションは、孤立感を解消するだけでなく、ものごとに対するかたよった見方・考え方を変え、問題解決の糸口を発見することに役立つことが実証されています。
精神医学者であるアーロン・ペックは「うつ」や不安の背景には、ものごとに対する極端な考えがあることを明らかにしました。
そして、そのような「いきすぎた考え」を解消するには、
まず現実に目を向けて自分が考えていることが正しいのか、
それとも単なる思い込みなのかを確かめることが大切であると考え、それをうつ病の治療に応用しました。
それは、簡単にいってしまえば、
「今(何が)(どう)問題なのか、あるいは(何が)(どう)不安なのか」をあきらかにしながら行動し、自分なりの思い込みを現実にそって修正し、柔軟な考え方を身につける、というものです。
こうした方法は精神医学の治療現場で活用されていますが、私たちがふだんから行っている「第三者との対話」、つまり「私」と周囲の「誰か」との会話も、思い込みを解消して現実的な解決策を見つけていくのに役立ちます。
しかも、「第三者との対話」は、それだけで精神的な支えにもなります。
アメリカの精神科医であるデビッド・スピーゲルは、生死に関わる重大な問題に直面しているときにも、他人との「不安の分かち合い」が大きな力を発揮することを報告しています。
スピーゲルは、進行した乳がんを患っている女性たちを集め、彼女たちに孤独感や死に対する恐怖、夫に対する感情などを話し合ってもらいました。
当初、女性たちは「私だけが、ここで惨めに、死の恐怖にさらされている」という思いにさいなまれていたのですが、
同じ境遇の者同士が話し合い、不安を共有することで、心理的負担が軽くなりました。
また、このような対話に参加しなかった人たちにくらべ、ずっと長く生きることができました。
「うつ」 になると、「こんなことで悩んでいるのは私だけじゃないか」と思い込んでしまいがちです。
でも、ほんのちょっと勇気を出して悩みを打ち明けてみると、「なあ~んだ、案外みんな同じ悩みをもっているんだ」と、心が軽くなって、そこから「うつ」脱出の糸口を発見できることがあります。
しかし、「うつ」が強いときには、このようなコミュニケーションの威力をうまく使えなくなることがあります。
「うつ」になると、心細くなって、「私にこの問題が解決できるんだろうか」と不安な気持ちにおちいります。
このような気持ちを解消しようとするために、どうしても何かに頼りたくなってしまいます。
そのとき、人間関係に頼りすぎると、どうしても相手に対していろいろな要求をしてしまいがちになります。
その要求が満たされれば、なんの問題もないのですが、
当然のことながら、相手に突きつけた要求が100%受け入れられるということはそんなにありません。
元気なときには、そういうことがあっても相手と折り合いをつけながら、うまくつきあえるのですが、「うつ」のときは感情をコントロールできずに、「満たされない」ことにイライラしてしまったり、相手に不満の感情をぶつけたりしてしまうことがあります。
このようにして、人間関係がぎくしゃくしてきます。
しかも「うまくいかない」とあせればあせるほど、「なんとかしたい」という思いが強くなり、ますます相手に対する態度、関係のもち方が一方的になってしまいます。
その結果、相手の人も疲れて自分も疲れてしまう……という悪循環におちいってしまいます。
こうした悪循環を防ぐためには、相手に何を求めようとしているのかを、もう少し具体的に考えてみることが必要です。
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