恥ずかしがり屋と社会的不安障害
学校へはいっているけれど、なにか人前で発表しなければいけないときに怖がるとか、あまり知らない人に挨拶をするのが極端に苦手とか、授業中に声書くときに手が震えるとか、人前で話すときに顔が真っ赤になる、汗を大量にかく、頭が真っ白になる、声が震える、口がカラカラになる、お腹が痛くなる、尿が近くなる、、というような症状を訴える、また、そのようなことが起こるから、学校へいきたくないといい出す、あるいは休んでしまうということがあれば、それは性格のせいではなく、「社会不安障害」という心の病気かもしれません。
社会不安障害は最近メディアに取り上げられるようになり、注目を浴びていますが、実は非常にたくさんの人がかかっている病気で、精神障害の中ではうつ病に次いで多い病気なのです。
日本人が一生のうち社会不安障害にかかる率は、2〜3%とされています。
また大人に多い病気と思われがちですが、実は発症のピークは15歳ころで、かなり若い時期に発症します。
さらに社会不安障害は、ただ単に性格が弱いとか、慣れれば克服できるとかいう誤った精神論に流れがちで、それが心の病気であるという認識がされない傾向があります。
つまり、社会不安障害の人は病気そのものに苦しむだけでなく、周囲からの無理解にも苦しむという二重の苦しみに悩まされます。
とくに思春期の人では、大人よりも若いので心が未熟で、鍛錬が必要であるというような、まったくの無理解にさらされることがほとんどだと思います。
精神力が足りないと親や教師に叱責され、友人には度胸がない人間というレッテルを貼られてしまうかもしれません。
これはほんとうに不幸なことです。
社会不安障害はれっきとした心の病気であり、治療すべき対象なのです。
「恥ずかしがりや」は病気なのです。
彼らは自分ではどうしようもないのです。
極端な例を挙げれば、骨折やがんが治療せずに気力で治るでしょうか。
まったく同じではないにせよ、病気であるならば治療すべきなのです。
社会不安障害の診断はそれほどむずかしくありません。
人前で過度に緊張するという症状があって、それを自分で理解しているけれども、どうしようもない、わかっているけれどいかんともしがたく、そのために日常生活や社会(学校)生活に支障を来していれば、社会不安障害という診断が可能です。
本人がわけもわからず苦しんでいるときに、「しっかりしろ」といった叱咤激励は禁物です。精神力などで治るものではありません。
それは脳内物質の作用によって出現する心の病気なのです。
苦しんでいる人に、傷口に塩を塗るようなことは慎まなければなりません。
心の病気であることを共に理解して、治療すべき病気であるという認識を深めることが必要なのです。
治療に関してはここでは詳しく述べませんが、薬物療法と認知行動療法(心理療法)があります。
重要なことは、いわゆるカウンセリングはあまり有効ではないということです。これは親や周囲の人たちがよく誤解していることでもあります。
カウンセリングがすべての人あるいはすべての精神疾患に有効ということはありません。カウンセリングは万能ではなく、逆に悪化させることもあります。
心理療法で効果的とされているのは、いくつかあります。例を列挙します。
「エクスブロージャー(曝露法)」は恐怖や不安を感じる状況に、不安症状が治まるまで居続ける方法です。
慣れて克服していく方法であることから、「脱感作法」あるいは「減感作法」とも呼ばれます。
「ソーシャルスキルトレーニング」は、社交的な場面を想定し、人との接し方を訓練する方法です。集団でこれを行う治療法もあります。
「不安対処訓練」は、不安が起こった場合の対処法を学ぶ方法です。
「認知修正法」は、人と接する場面において、必要以上にダメだとか、人に不快感を与えているなどといった誤った考え方を修正する方法です。
「森田療法」は、恐怖や不安を取り除こうとせず、ありのまま受け止め、考え方を変えていくという方法です。
けれども私個人の意見としては、心理療法よりも薬物療法のほうが効果的であると考えています。
ある社会不安障害の人は、集団での心理療法過程でより緊張感が高じて、悪化傾向を示したこともありました。
もちろんフルボキサミンもすべての社会不安障害の人に有効ではないし、効果が出るまでに1か月程度を要します。
また、初期には吐き気などの副作用がしばしば出現します。
けれどもフルボキサミンが効くときは、ほんとうに劇的に症状が改善するし、生活が見違えるほど楽になることもあるのです。
どうしても薬が体に合わない人も少なからず存在していますが、それ以外の場合は薬をすすめています。
それまでの苦しさが「ウソみたい」に楽になったという人も相当数いるのです。
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