摂食障害
隠れて食べたり、急にやせたり太ったりする
上の見出しのような現象が自分の子どもや周囲の人に出現したときに、まっ先に思い浮かべなければいけないことは、「摂食障害」の可能性があるということです。
摂食障害のタイプには3つあります。
拒食のみを繰り返すタイプは、かなり以前から知られた拒食症と呼ばれるタイプです。
1970年代に世界中で人気を博したアメリカの兄妹デュオ、「カーペンターズ」のカレン・カーペンターが拒食症で死亡したことを記憶している人もいるでしょう。
ただ最近は拒食だけのタイプは少なくなってきていて、過食と拒食を繰り返すタイプと過食だけを繰り返すタイプが増加しています。
3つのタイプに共通しているのは、自分は太ってしまうのではないかという観念に支配されていることです。
「やせ願望」とも呼ばれることもありますが、「太るのが怖い」という強迫的な観念だと私は考えています。
摂食障害は女性に多く、男性に少ないとされていますが、思春期の男性に出現することもあります。
きっかけはダイエットではじまることが多く、過激なダイエットのあとの飢餓状態から食べはじめると止まらなくなり過食になるパターンがよくみられます。
摂食障害の心的構造は、比較的理解しやすいことが多く、心にかかえきれないストレスを「飲み込めない」「吐き出す」「食べ続ける」という行為で解消しょうとする、「食行動」の代理行為と見なすことができます。
誰でもストレスをかかえて生活しているのですが、摂食障害の人はどういうわけかすべてのストレスが「食べ・吐き」という、食行動の異常として現れてしまうようになるのです。
加えて、過食のときに必ずといっていいほど罪悪感を伴います。
たくさん食べてしまったという後悔の念ともとらえられるのですが、このような状態に陥っている自分を責める「自責の感情」であると私には思えます。
この自分を責めてしまうという感情が、自分をさらに追いつめてしまうことにつながりやすく、気持ちをしずませて、うつ状態になることもあります。
摂食障害の対応の基本は、食べることへの話題を避けることが重要です。
食行動の異常はみていられないほどに過剰なので、周囲の人はついついそのことを注意したり、やめさせようとしがちです。
けれどもこれは彼らの罪悪感と結びつきやすく、さらなる悪循環を導き、袋小路に陥ってしまう結果となります。
食行動の異常は、彼らの精神状態が安定化するのに伴って少しずつ改善していきます。
食行動の異常、すなわち過食や拒食を指摘しすぎると、かえって症状を悪化させます。
自らが罪悪感を持っているのに、それをことさらに指摘され、やめるように説得されれば、自分はダメ人間だと思うかもしれないし、家族に知られないように盗み食いしたり、夜中に冷蔵庫を漁ったり、コンビニで大量にお菓子や菓子パンを買い込んで部屋に隠したりします。
ただでさえそのような行為に陥りがちで、症状を悪化させることが多いのに、家族や周囲の無理解による言葉がけで、事態は悪い方向へと至るのです。
たしかに周囲の人の「諭したい」という気持ちはわかります。
なぜこれほど食べなくなってしまうのか、こんなにガリガリにやせているのにどうして体重が増えてしまうとあれほど恐怖を感じるのか、食べたものを吐き出すのは苦しいはずなのになんでそこまでするのか、なかなか理解しがたいところがあります。
けれども大切なことは、摂食障害の人が現実に苦しんでいることをわかってあげなければいけないということです。
そして、食べることを話題の中心に据えてはいけないのです。
何度も繰り返しますが、自分自身の生活が安定し精神状態が穏やかになっていくときに、しだいに食行動の異常も改善していくのです。
ただし改善に至るまでの過程は平坦ではなく、良くなったり悪くなったりをいきつ戻りつします。そして、長い経過を要します。
10年以上かかることもまれではありません。
ある日気がついたら、食べることにそんなにこだわりがなくなったというように、ゆっくりと治っていくのです。
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